その人物の奥様
親友でした。
急逝して15年が経ちました。高校の入学式からの縁でずっと仲良しでした。
彼女と過ごした青春は、優しくてふっくらとした思い出です。
晩年、とても沢山会いたがってくれて
その度に『エリーゼのために』をリクエストされました。
そして、毎回、弾くたびにポロポロというよりボロボロ涙を流してくれました。
「目狸になってない?」
「なってる、なってる、凄くなってる」
と言い合って笑ってました。
15年前、見送ったその日、
人物は、こう言いました。
「いつまでも止まっていてはダメだよ!
あなたには、家庭も仕事もあるのだから切り替えなくてはね。」
真っ赤な彼の目を見つめながら頷くことしか出来ませんでした。
最近、あのランランが弾く『エリーゼのために』を聴きました。
珍しい演奏でした。
ベートーヴェンのというよりランランの『エリーゼのために』でした。
私の『エリーゼ』は、親友の笑顔と涙が混ざった『エリーゼ』です。
大切に……。